銀幕デビューの話

まくおろ公開3日目、重い腰を上げてやっと映画館に足を運んだ。といっても毒毒モンスターの東京千穐楽を見納めた帰りで、わざわざなんの予定もない日に出向く気にはなれなかった。

 

 

のべつが好きな人が見た、まくおろの感想。

 

 

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そもそも私はこの作品に対してまるで乗り気ではない。っていうか主演が自軍の人じゃなかったら絶対行ってない。

今回の原作は3年前に宇宙Six主演で上演された舞台『のべつまくなし・改』だが、龍太と監督以外に前回と同じ役演じてる人がいない時点で、まあなんかお察しの通り。そこまで別物にするなら、龍太の役も変えてやったらよかったのでは。

 

 

大体、まくおろLIVE東京初日の出来を思い返すと、酷すぎて見れたもんじゃなかった、あれに1万も出したのほんと無駄だった。そりゃ映画のクオリティも期待できるわけがないじゃん。それでも見に行ったのは、完全に“初主演映画”ってラベルが貼られたこの作品を1度でも見届けることで越岡裕貴に還元したいっていうオタクとしての惰性。

 

 

 

 

私自身の見方として、それぞれのキャラクターへの固定観念があるのが良くないんだと思う。いやそれ以外にも気になる点は色々あるし、他の人がどう見てるか知らないけど。これのべつもまくおろLIVEも通ってない完全に初見の人って面白いのかな。

 

 

ついでに、モン太とブン太は陰と陽の対比だと思ってたんだけど、今回の作品はそれが薄い気がした。のべつとは別物だからそれはそれでいいんだけど。その代わり色恋っぽい描写が出てくるのは納得いかなかった、そうじゃない感すごい。

 

 

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映画本編の内容に入る前に、そもそもまくおろLIVEで描かれてた出会いのシーンが納得がいってない話。

そもそもモン太って、心中ブームを起こしてしまった罪悪感に耐えかねて死のうとしてたんじゃないっけ?あのLIVEの感じだとそこまで伝わらないよね、死のうとしたところでブン太に出会って曽根崎心中の存在を知られて、「お前すげえな!俺がお前の力使ってやるから俺と商売しようぜ」って話になるんじゃなかったっけ、のべつ。

 

…映画だけじゃどんな出会いをしたのかも伝わらないし、なんで心中コンサルしてるのかまったくわからなくない?せめてそこを回想シーンで入れるべきでは?

LIVEを見てない人が設定も分からないまま進んでく展開、映画としてどうなんだろう。

 

普段全く映画を見ないので相場がよく分からないけど、映画と呼ぶにも舞台と呼ぶにも中途半端なのかなあと。

 

 

舞台っぽさを残して撮った、的なことを主演も監督も言っていたし、公開前に見たメンバーですらそう思ったらしいから、舞台慣れしている人にはすっと入ってくるテンポ感や喋り方なのかもしれない。だとしたらこれ、そうではない人にどうオススメしたらいいんだろう。

ハードルの高い演劇を映画にすることで見やすくしてるはずなのに、そこを舞台仕様にしたらハードルの高さ元に戻るんだけど。

 

 

あと作品自体の認知度が低いことをこちらのせいにしないでほしい、それそっちの、運営側の落ち度。プロモーションもろくにできない。…越岡さん以外がどこで宣伝してたか全く知らねえや。そんなに多くのところで宣伝してたわけでもないよね?

 

それに我々がレビューしたところで引っかかる層はたかが知れてる。新感覚…なんだっけ。とにかく、映画をこよなく愛するような人に薦めるにはどうにも映画感がなさすぎるのも宣伝しにくい要素のひとつではないんだろうか。

 

 

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ツッコミどころ多すぎて触れるのもめんどくさいので詳しいことは割愛

 

・カット割多すぎて酔うし、繋ぎも雑

・ド頭の殺陣のシーン別に全部山の中で撮ればよかったのでは… 変にスタジオの映像と混ぜたことで世界観めちゃくちゃになった、観客を江戸の世界に引き込む気ある?

・上記に付随して、歌唱シーンが気になる。せめてロケと映像合わせて使うとかすればよかったのに、ステージだけのシーンにしたせいでまるで意味がわからなくなった。どういう設定のつもりでステージ映像を差し込むことに決めたのか私には謎。

・寺坂って必要?あいつが雪斬なのはわかったけど、結局なんのために赤穂藩に入ることを快諾したのかが謎。赤穂藩入りたくて入ったわけじゃなさそうだったよね?誘われたからだよね?え、はじめからその気だったの?ってライブの画を思い出して混乱した。

・モン太の髪ほどけるシーン要る?近松紀伊国屋で色恋的な展開にもっていきたいの?だとしたらもっとドキドキときめいたんだなって顔させてよブン太に。あの真顔で見つめてるだけの時間なら無駄では…

・哉々子さんが雪斬なのほんと世界観めちゃくちゃでしぬ、どういうことなん。

・ブン太の催眠ってなに?雪斬としての記憶が完全に消えてるわけでもないし、結局なんの催眠かけられてたのかもわかんない。

 

 

 

 

1回しか見てないのにこんだけ引っかかるのすごくない?とすら思う。

 

見終わっていちばんに出てきた感想は “モン太がえださんだったらなあ” だった、寡黙だからこそ筆に想いをのせて戦い抜くモン太が見たい。

 

まくをおろすなで1番引っかかったのはそこ、モン太が刀を持ったこと。

なぜ作家である彼が刀を握る描写になったのかが全く理解できない、彼はそれまでずっと作家として脚本を書くことで人の命を救ってきた。それが、心中ブームで亡くなった人への弔いだと。

だから最も身近で大事なブン太を守るために刀を手にする理由が全くわからなかった、そこは筆で救ってよ。本を認めてくれた人を、物書きの力で守る演出でなかったことがもはや悔しい。

 

 

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のべつまくなしが、好きだった。

 

静かなモン太が筆を巧みに操って、かつては人を殺めてしまった言葉で、世界を動かしていくのも。

積極的なブン太が、刀を捨て、自分の過去と決別して、誰かを笑顔にするために生きるのも。

対極なふたりが一緒に戦って歩んでいく様は私にとって刺激的で、印象的で。今でもだいすきで大切な作品なんだって気づけた。いい機会だったのかもしれない。

 

 

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生涯残る“初主演映画”という肩書きがこんな作品でいいのか、わからない。ただ、あの大きなスクリーンで越岡裕貴を見れた。その喜びだけは本物だった。

 

映画館で越岡さんの姿が見れることに対しては羨ましいなとも思った、いつか雄大くんも福ちゃんもマツも、この大きなスクリーンで見れる日がきますようにと。

 

越岡さんが名のある役者さん達と少しでも演技を交わせたことがこれから先の糧になれば、それだけでもこの作品の収穫といえるかな。

 

 

銀幕デビュー、そして初主演おめでとう。

素直に盛り上げてあげられなくてごめんなさい。

次はもっと、良い作品にめぐりあえますように。